第34話 『風の万里 黎明の空 第十一章』


あらすじやキャラクター設定などこちらを参考にしてくださいw →



中島陽子(ナカジマヨウコ)♀:日本からきた慶国の国王。歳は16歳。
大木鈴(オオキスズ)♀:日本からきた海客。歳は16歳。思い込みが激しい。
祥瓊(ショウケイ)♀:芳の国の元皇女。歳は16歳。楽俊にあってから優しいくなる。
景麒(ケイキ)♂:麒麟。慶の国の宰輔。20代半ばの落ち着いた青年。
凱之(ガイシ)♂:30代半ばで人のいいにーちゃん。
桓タイ(カンタイ)♂:30代半ばでメチャメチャつおーいにーちゃん。
浅野郁也(アサノタクヤ)♂:陽子と一緒に日本から来た高校生。この世界で少し気が狂っている。
夕暉(セッキ)♂:10代後半の少年、頭がメチャメチャ切れる。
虎嘯(コショウ)♂:20代半ばぐらいの、筋肉ムキムキにーちゃん
昇鉱(ショウコウ)♂:悪役。30前半ぐらいの男
小司馬(ショウシバ)♂:昇鉱の部下。30代半ばぐらいの男
蘭玉(ランギョク)♀:桂桂の姉、中学生ぐらい。
桂桂(ケイケイ)♂:小学校中学年ぐらいの子供
遠甫(エンホ)♂:人の良いおじいさん
班渠(ハンキョ)♂:景麒のペット(?)。狼みたいな獣。声は低い。

注1:陽子の読み方で(ヨウシ)と入っているものは「ヨウシ」。なにも入ってないものは「ヨウコ」と呼んでください。
注2:読めない漢字はみんなに聞いてくださいw
注3:ナレは人数が少ないときは要らないです(緑の文字のところがナレです)
注4:人数メチャメチャ多いです!!なんで被ってくださいww
   被れるのは・・・・男性なら『虎嘯・遠甫・桓タイ・班渠』と『浅野・凱之・夕暉・景麒』と『昇鉱・兵士・小司馬』がOKw
             女性なら『陽子・桂桂』あと『鈴・祥瓊・蘭玉』も被れなくはないですw

景麒役のかたが題名をお読みください(o*。_。)oペコッ

第34話 『風の万里 黎明(レイメイ)の空 第十一章』

OP(可能であれば入れます)

陽子N「昇鉱(ショウコウ)、そして景王への殺意を抱いた鈴は、昇鉱暗殺をはかる。
     しかし虎嘯(コショウ)、夕暉(セッキ)兄弟に止められ、
     志(ココロザシ)を同じくするその仲間に加わることとなる」

鈴N「祥瓊(ショウケイ)は和州(ワシュウ)州都(シュウト)明郭(メイカク)で、
   僅(ササヤ)かな罪で死刑にされようとしている者たちを見る。
   そして思わず石を投げ込んでしまい、兵士たちに追われてしまうのでした」

祥瓊N「陽子は和州侯(ワシュウコウ)呀峰(ガホウ)の人物と統治ぶりを見るために、州都明郭に向かった。
     そこで行われていたのは恐るべき恐怖統治と、デタラメに造られた街並みだった」

明郭・街中

兵士「いたぞ、あの娘」

陽子「・・・行け、逃げろ」

祥瓊「・・・でも」

陽子「私のことは・・・心配しなくていい」

祥瓊「・・・・・」

明郭・壁の外

陽子M「ひどいものだ、高い税金をとって造っている隔壁(カクヘキ)がこれか」

いとも簡単に崩れる壁を見て、呟く陽子。しかし兵士に囲まれる。
そのとき足元から驃騎が出現した。


兵士「妖魔だ!」

陽子「驃騎(ヒョウキ)飛べ!!」

陽子の言葉とともに、驃騎は背に陽子をのせ空を駆け出した。

とある木陰で

景麒「いやな匂いがいたしますね、主上からではありませんが」

陽子「悪い、班渠(ハンキョ)に怪我人を運ばせた」

景麒「・・・!」

陽子「お前の言うとおり・・・明郭には血の匂いが満ちていた」

明郭・広場

昇鉱「・・・・・・急ぎ拓峰(タクホウ)へ戻れ」

浅野「オレ、一人で?」

昇鉱「連絡はつけておいた。私の部下と共に、固継(コケイ)の里家(リケ)をおとなうのだ。
    台輔(タイホ)が訪ねたという里家をな」

浅野「え?」

昇鉱「部下の中に仙(セン)はおる、言葉は通じる、だが主上の顔は知らぬからな」

明郭・桓タイたちの屋敷

桓タイ「オレの仲間があんたのことを見ていた。石を投げるとは勇敢(ユウカン)な娘さんだ」

祥瓊の挫いた足を手当てしながら

桓タイ「オレは桓タイ(カンタイ)という、この明郭(メイカク)で、まあ傭兵のようなことをしている」

祥瓊「私は、祥瓊(ショウケイ)。傭兵って?」

桓タイ「このへんにゃ追いはぎが出るんでな、雇われて荷物を守っている・・・
     あんた、今夜の宿は?」

祥瓊「・・・いえ・・まだ決まってないわ」

桓タイ「なんだったらここにいるといい。
    ここはオレと仲間で借りている家だが、殺伐(サツバツ)とした顔ばかりでは。
    あんたのような別嬪(ベッピン)がいると安らぐ」

祥瓊「でも大丈夫なの?かくまったりして」

桓タイ「オレが勝手に助けたんだからな、オレもいろいろとここの流儀に思うところがあるってことさ」

祥瓊「流儀」

桓タイ「ここじゃ税は七割だ、そして重い夫役(ブヤク)に駆り出される・・・・
    逆らえばすぐに、ああなる」

祥瓊「・・・磔(ハリツケ)・・・」

桓タイ「(気付いて)ああ、茶も出さないですまなかったな、しかし・・・困ったな」

祥瓊「?」

屋敷内・厨房
そこは半年は使っていないような光景が広がっていた。割れた食器はそのまま、誇りが被っている。


祥瓊「呆れた」

桓タイ「みんな飯は外で食ってくるからな」

祥瓊「お茶ぐらい沸かせるようにするわ、宿代代わりに」

桓タイ「そいつは助かる・・・いや、どこをどういじっていいのか、わからないんだ」

祥瓊「よほどのおうちに生まれたのね、それで傭兵?」

屋根裏・井戸端
祥瓊と桓タイ、厨房の汚れ物を洗っている。


桓タイ「それで?はるばる芳(ホウ)から、どこを目指してきたんだい」

祥瓊「まず・・・止水郷(シズイゴウ)というところに行こうと思っていたの。
    ここから街道で真っ直ぐなんでしょう?」

桓タイ「(険しく)止水?」

祥瓊「(その激しい顔つきに驚き)止水に行けば土地と戸籍をくれるって。
    戴(タイ)から難民をたくさん助けているって・・・違うの?」

桓タイ「それは知らない、だがやめたほうがいい」

祥瓊「どうして?」

桓タイ「さっき和州(ワシュウ)の税は七割だと言ったな。
    だがどこの郷(ゴウ)や県でも実際は五割もとれればいいほうだ。
    しかしキッチリ七割とるところが一つだけある、それが、止水だ」

祥瓊「・・・・え」

桓タイ「止水郷、郷長昇鉱(ゴウチョウショウコウ)
    和州侯呀峰(ワシュウコウガホウ)に仕えるもう一匹の獣(ケダモノ)だ。
    止水が難民を集めているんだとしたら、それはその分人が減るからだ。
    止水では七割に一分(ブ)でも欠ければ家族もろとも死罪、
    それだけじゃない村一つ丸々、昇鉱の狩りにあって燃やされることもあるそうだ」

祥瓊「そんな・・・だってわたし、他の人にも止水のこと話してしまった・・・・
   (泣きそうになり)王は・・・何をしているの?新王は」

桓タイ「王は駄目だ。朝廷は官吏(カンリ)に牛耳(ギュウジ)られているという噂だな、前の王もそうだった」

祥瓊「(息を呑んで)・・なぜ誰もそれを王に言わないの?」

桓タイ「(目を白黒)王に言う?」

祥瓊「誰かが景王の目を覚まさないといけないわ。
   たとえ国がどういう状態なのか知らないのだとしても、その報いは必ず景王(ケイオウ)に返る。
   知らなかったじゃ許されない、力が足りなかったじゃ許されないわ。誰かがそれを教えないと・・・・」

桓タイ「あんた、芳(ホウ)の人だったよな」

祥瓊「そう・・・だけど。・・・景王が他人のような気がしないの。同じ年頃の女王だって聞いたから。
    ・・・・誰かが教えないといけないわ、王座とは何かを」

桓タイ「どうやって?相手は金波宮(キンパキュウ)の奥の奥だ」

祥瓊「・・・そうね」

桓タイ「和州に火がつけば気がつくかな?
     和州に反旗があがる・・・そして次々と九州(キュウシュウ)のあちこちに火がつけば、
     足下に抱えた火種に目を向けるかな?どう思う」

祥瓊「どう思うって・・・わからないけど、和州はなんとかしなくちゃいけないわ」

桓タイ「俺もそう思う」

凱之「ここでしたか・・・・(祥瓊をみて)やあ」

祥瓊「・・・あなた・・・ここの人?」

桓タイ「仲間だ」

祥瓊「傭兵の・・・それとも・・・」

桓タイ「それとも・・・・の仲間連中に、引き合わせようか?」

祥瓊「・・・・ええ」

拓峰・虎嘯の宿・裏

虎嘯「俺たちには名はない。だが街でなにかあったら、この指輪をつけている者を探せ、そしてこうして」

と拱手のポーズ。指輪が光る

虎嘯「どこから来たか訊く。麦秋産県支銀(バクシュウサンケンシキン)から来た、と答えればそれが仲間だ。
    自分は老松(ロウショウ)から来た乙悦(オツエツ)だ、と名乗る」

鈴「それは、なに?」

虎嘯「もう何百年も前、慶の達王(タツオウ)の時代、老松(ロウショウ)という飛仙(ヒセン)が現れた・・・
   巷(チマタ)で道を施してたのを達王に招かれて朝廷に仕えた。しばらく仕えてある日姿を消した。
   氏名が乙悦というらしい・・・ま、本当にいたのかどうだか知らん。講談でよく出てくる」

鈴「・・・あなたたちの目的は昇鉱だけ?」

虎嘯「いや、あいつをかばう大物引きずりだしたいけどな」

鈴「景王を?」

虎嘯「なんで景王なんだ?」

鈴「そういう噂を聞いたもの、他ならぬ王が昇鉱を許しているんだって」

虎嘯「そういう噂もあるが・・・俺が言ったのは呀峰のことだ、こう和州侯の呀峰・・・。
   先の王の時代に州侯に任じられたが、賄賂(ワイロ)で和州を買ったと言われていた。
   なにしろひどい税をかけるからな」

鈴「その呀峰を・・・・いまの王もほうっているのね」

虎嘯「ああ、それに新王は麦州侯(バクシュウコウ)を罷免(ヒメン)された」

鈴「麦侯(バクコウ)?」

虎嘯「瑛州(エイシュウ)の西にある、麦州の州侯だ。
   民に慕われていて、去年偽王(ギオウ)が立って他の州侯が偽王を奉(ホウ)じたときも、
   最後まで敢然(ユウゼン)と偽王に抵抗し通した」

鈴「なのに罷免されたの?呀峰や昇鉱が許されてて?」

虎嘯「オレたちにしてみりゃ、なんで麦州侯が罷免されて、呀峰がのさぼっているのか、わけがわからん・・・
   まぁ登極(トウキョク)したばかりだし、仕方ねえって声もあるんだが」
鈴「景王も前の王様と大差ないのよ」

虎嘯「お前・・・景王までどうにかしようなんて思っていたんじゃないだとうな」

鈴「(冷たく笑いながら)そんなわけないじゃない」

虎嘯の宿・厨房

鈴「あたし、自分がとても嫌い・・・・だからあたし、自分を憎む代わりに、昇鉱を憎んでいたのかもしれない。
    でも・・・・昇鉱も、景王もこのままにしておいたらいけないわ・・・・違う?


虎嘯「実を言えばよくわからん。
   昇鉱や呀峰は国のために値打ちがあるかもしれないし、麦州侯の罷免にも理由があるのかもな。
   だがオレは・・・・あいつがいる限り、しんどいんだ」

鈴「しんどい?」

虎嘯「夕暉がな・・・・あいつ出来がいい。
   するすると学校を進んで、このまま行けば官吏に取り立てられるのは間違いないってところまできていた・・・・・
   でも上の、小学への推薦があったとき、オレはちっともそれが嬉しくなかった」

鈴「え?」

虎嘯「官吏になってどうする?郷府に入って昇鉱に使われてんのか?呀峰に加担すんのか?
   オレは夕暉がああいう連中の仲間になるのが嬉しくねえ。夕暉も嫌だったんだろう」

虎嘯、珍しくまじめな顔で俯き、今も鎖をいじる。

虎嘯「罪もねえ子供が轢(ヒ)き殺されたと聞きゃ腹が立つ、しんどいしむかついて忘れられねえ・・・。
   忘れたいのに忘れられねえいやなことがある。
   喜びたいのに喜べないことがある、俺はな、そういうのがしんどくていやなんだな・・・・
   生まれてきた以上はなんとか気持ちよく生きたいだろ?
   生まれてきて良かったなぁと思いたいじゃねぇか」

鈴「(頷き)でも昇鉱がいたら、いつまでもそう思えないのね」

虎嘯「ああ。昇鉱を一発殴って済む話ならそうする。
   でもな昇鉱をなんとかするっていうのは、大勢でよってたかって郷長から引きずり降ろすしかなえ。
   死んだっていやだって奴が言うなら、首を刎(ハ)ねてでもそうする。
   オレのやろうとしていることはとんでもねぇことだろうが、おれは辛抱できねぇんだ」

鈴「なんだか、よくわかる」

虎嘯「そうか?」

拓峰・郊外の墓地

陽子「新しい墓ならわかるかと思ったが・・・無理だな、この数では」

景麒「その、昇鉱に轢かれたという子どもですか」

陽子「私は、慶(ケイ)に釘を打って人を殺す刑罰(ケイバツ)があるなんて知らなかった」

景麒「まさか・・・」

陽子「この止水では些細な罪で人が殺される・・・・それがこの墓だ・・・
    私や景麒すら知らないないことがたくさん行われている国だ」

あたりをみわまわして

陽子「気になることがある、景麒はここにいてくれ」

景麒「・・・お供します」

陽子「ここも血の匂いがひどいのだろう?
   それに、あの連中のなかに、景麒の顔を見知っている者もあるかもしれない」

景麒「・・・主上」

陽子「わかっている。できるだけ早く堯天(ギョウテン)に戻らなくちゃいけない。
    知らないことを知り尽くしてから、なんて言っていたら、いつ戻れるかわからない。
    それくらいものを知らないことがわかった」

景麒「さようですか(苦笑)

陽子「・・・私には街に降りてみることが必要だった・・・
   いまは、きっと何か、区切りをつけたいだけなんだ・・・
   王としてじゃない・・・私の気持ちだ」

拓峰から固継への道・馬車内

小司馬「お前が先に行け、主上を訪ねてきた、と言うんだ」

浅野「・・・主上・・・はい・・・」

虎嘯の宿・食堂

鈴「・・・あ、いらっしゃ・・・い」

入ってきた陽子、見て前にあったことがある人だと気付く鈴。

鈴「あなた・・・」

陽子「たしか・・鈴」

鈴「あのときは・・・清秀(セイシュウ)を・・・・ありがとう」

陽子「清秀?あの子は・・・」

鈴「拓峰(タクホウ)の墓地、もともとは慶の子なんだけど、慶が荒れて巧(コウ)に逃げて、
  新しい王様が立ったから戻ってきたのに、死んじゃった」

すこし、間が入り・・・・

鈴「あたし、大木鈴というの」

陽子「大木・・・鈴。ここは鈴だけ?前は背の高い男の人と、夕暉という少年がいたけど」

鈴「虎嘯のこと?あれ?さっきまでいたんだけど・・・二人に?」

陽子「いや・・・いいんだ」

鈴「あたし、才(サイ)から来たの。才の王様はいい人だった。
  いい王様に恵まれない国は可哀想・・・あんな郷長や州侯を見逃して」

陽子「・・・え・・・」

鈴「景王は何をしているのかしらね?自分の国がどんな状態なのかしらないのかしら」

陽子「傀儡(カイライ)なんだ・・・」

鈴「え?」

陽子「無能で、官吏の信頼もないから、何もできないし、させてもらえない。
    黙って言いなりになっているしかない」

鈴「そう・・なの?」

陽子「いや、噂だ」

鈴「景王が昇鉱を保護しているっていう噂だってあるわ・・・
  和州侯がほっとかれて、麦州侯が罷免されたのだって」

陽子「(驚いて)麦州侯?」

鈴「麦州侯って、とってもいい方だったのに、景王が辞めさせてしまったんですって。
  とても慕われていたのに」

陽子「(耐えられず)そう・・・・・(立ち上がり)食事はやめておく」

鈴「あ、どうかした?」

陽子「いや・・・門が閉まる前に、固継(コケイ)に帰りたいから」

鈴「そう?また来る?」

陽子「(小さく頷き)ああ」

陽子立ち去る

鈴「おしゃべりに呆れられちゃったかなぁ」

ヌッと虎嘯が現れる。

鈴「あれ、いたの?」

虎嘯「いまの娘、何者だ?」

鈴「虎嘯達の知り合いじゃないの?固継に住んでるって」

夕暉「僕たちを、探っているのかな?」

鈴「なんのために?」

夕暉「ぼくたちは武器を集めている。冬器を。
    少し頭があればそれがなんのためか気付く者もいるさ」

虎嘯「鈴、明日また労(ロウ)のところに行ってくれ。荷物が届いているはずだ。
   それがつき次第、ここを捨てよう」

鈴「そんな悪い人に見えなかったけど・・・」

夕暉「あの人は、ただ者じゃない」

固継・里家・厨房

桂桂「陽子(ヨウシ)、いつ帰ってくるかなぁ」

蘭玉「もうじきじゃない?出るときにそう言ってたから」

桂桂「ね、陽子(ヨウシ)、お嫁にいくのかなぁ?」

蘭玉「さあ、どうかなぁ・・・でもまだここにいるわよ」

桂桂「うん」

ドンッと激しく扉が開けられる音。

蘭玉「遠甫(エンホ)・・・・?」

遠甫の房室

小司馬「遠甫。まさか・・・貴様がこんなところに隠れておるとはな」

遠甫「見た顔だ・・・・。たしか小塾(ショウジュク)焼き討ちの日、か・・・」

小司馬「捕らえろ!」

浅野「(わけがわからず)なんだよ、まだ景王のこと、何も・・・」

小司馬「この者は重罪人だ、昇鉱さまがずっと探索されていた」

浅野「え?」

小司馬「瑛州(エイシュウ)とは。こんな目と鼻の先にいたとはな」

蘭玉「遠甫?」

蘭玉と桂桂が部屋にやってくる。桂桂が清秀に見えて思わず銃を抜く浅野。

浅野「う、うわあっ!」

小司馬「(浅野に)よし、殺せ」

浅野「え?」

小司馬「この者は拓峰に連行する。こいつらは景王に仇(アダ)なす者たちだ・・・始末しろ」

遠甫「桂桂(ケイケイ)、蘭玉(ランギョク)、逃げろ」

桂桂「遠甫に何するんだ、やめろよ(浅野に石を投げる)

浅野M「やっぱり・・・死んじゃいなかった・・・オレを憎んでいる・・・
     俺たちが村を消してしまったから・・・俺が目を離した隙に馬車に・・・
     いやだ・・・いやだ・・・くるなくるなくるな」

浅野「うあああああああ」

撃つ。桂桂が肩を撃たれて倒れる。

蘭玉「桂桂っ!」

小司馬「やれっ!」

遠甫「蘭玉、逃げなさい!」

蘭玉反射的に走り出す。

小司馬「(浅野ともう一人に)捕まえておけ!」

捕まえていた遠甫を放り出して、自分は部下二人と蘭玉を追う。

浅野「動くなっ・・・(弱気に)その子供・・・死んだのか」

遠甫は桂桂が生きているが、わざと首を振る。

浅野「・・・そうかよ・・・」

遠甫「お前は海客(カイキャク)だろう・・・陽子の友ではないのか」

浅野「・・・陽子?・・・陽子!?」

遠甫「何故、こんな・・・むごいことをする・・・子どもは・・・死んじゃならんのだ」

浅野「・・・オ、オレは、景王を助けて、自分の世界に返る。
   この世界はオレを殺そうとしている・・・だ、大体これは現実じゃないんだ、だから?」

兵士「もう喋るな」

浅野「いま、陽子って言ったか・・・なぁ」

兵士「喋るなって言っただろう!!(浅野に剣を突き立てる)

浅野「あ・・・う・・・」

里家内
逃げる蘭玉・・・すぐ後ろから男たちが追ってきている

蘭玉「うそよ・・・ひどい・・・桂桂・・遠甫・・ああ・・・桂桂」

陽子の部屋にかけこみ、鍵をかける。
扉がバンバンっと叩かれる。震えながら陽子の寝床に倒れこむ。
枕もとに袋を見つけ、中には景王の御璽(ギョジ)だった。

蘭玉「なんで・・・こんなものが・・・陽子(ヨウシ)・・・」

扉が破られる


蘭玉「いけない・・・これを渡しては・・・」

蘭玉に無言で剣が迫る

蘭玉M「陽子(ヨウシ)・・助けて・・あたしたちを・・・慶国の民を」

蘭玉の背に突き刺さる剣。すべてが赤く染まって・・・・。


飛行する驃騎(ヒョウキ)と班渠(ハンキョ)。その背に陽子と景麒。

景麒「主上・・・・拓峰で、何があったのですか」

陽子「・・・・・」

景麒「班渠(ハンキョ)・・・」

班渠「・・・・(首を振る)

陽子「景麒・・・麦州侯浩瀚(バクシュウコウコウカン)はどういう人間だ」

景麒「主上のほうがごぞんじでしょう」

陽子「わからないから訊いている」

景麒「人なりもご存じでなく、罷免(ヒメン)なさったのか?」

陽子「景麒(ケイキ)は・・・麒麟(キリン)とは思えぬほどいやみだな」

景麒「主(アルジ)が頑固ですから、これぐらいでいいんです」

陽子「浩瀚は偽王(ギオウ)に与せず、自ら王座を狙った・・・
    そして私の取り調べを畏(オソ)れて、逆に弑逆(シイギャク)を企み・・・露見(ロケン)して逃げた」

景麒「ではそういうことなのでしょう」

陽子「(怒って)だが、浩瀚は民に慕われていたと聞いた」

景麒「そう聞いております」

陽子「だったら何故そう言わない!」

景麒「私が浩瀚をかばえば、麒麟は仁獣(ジンジュウ)だからだと言われた。
    私の言(ゲン)よりも官の言を信じられたのではなかったのですか?
    私は浩瀚は簒奪(サンダツ)を企むような人物ではないと思うと申し上げた。
   何故それをいまになってお訊きになるのか」

陽子「(少し考えて)・・・浩瀚を・・・どう思う?」

景麒「よく出来た人物に見えましたが。言葉を交わしたことは二度ばかりですが」

陽子「景麒、だったら・・・・」

景麒「(遮り)そう言えば主上は考え直してくださいましたか?」

陽子「もう・・・いい・・・・」

里家への道

景麒「それほどわたしにお怒りか?」

陽子「自分に腹が立っているだけだ・・・浩瀚への疑惑を最初に奏上したのは呀峰だった・・・・
    弑逆についても浩瀚が関わる証拠もなかった・・・
    (景麒を見て)怒って悪かった、八つ当たりだ」

景麒「わたしの言葉が足りませんでした」

陽子「いや、私がちゃんと訊けばよかった・・・すまない・・・景麒?」

景麒「・・・かつて同じようなことを・・・・言われました・・・本当に・・・私は・・・・」

里家に近づく二人

景麒「遠甫にご挨拶申し上げて、堯天に戻ります」

陽子「遠甫はどういう人だ?」

景麒「麦侯から、道を知る人とうかがいました。
    狙われているので、瑛州でかくまってもらえないか、と」

陽子「浩瀚の・・・そうか・・・それだけのことか」

里家の手前で、立ち止まる景麒

陽子「どうした?」

景麒「血の、匂いが・・・」

遠甫の書房

陽子「蘭玉、桂桂!?桂桂・・・・!」

グッタリと倒れている桂桂を抱き起こそうとする陽子

景麒「まだ息があります・・・驃騎(ヒョウキ)、芥瑚(カイコ)、この子を金波宮(キンパキュウ)に」

陽子「桂桂は恐れていた・・・変な男たちがいると・・・私を狙っているものと思っていた・・・・
    なのに・・・(景麒を見て)景麒(ケイキ)、お前も金波宮に」

景麒「ですが」

陽子「無理をしなくていい。桂桂を頼む」

言いながら陽子、庭に出て・・自分の部屋に向かう

陽子「(呆然と)・・・・蘭玉」

景麒「(班渠に)・・・遠甫は?」

班渠「おりません・・・骸(ムクロ)も」

景麒「連れ去られたか・・・・」

景麒の会話が耳に入らない陽子、蘭玉を抱きかかえる

陽子「・・・蘭玉?」

抱きかかえたとき、蘭玉の手から景王御璽が落ちる

陽子「・・・・!」

景麒「・・・それは・・・景王御璽(ケイオウギョジ)・・・」

陽子「・・・隠してくれたんだ・・・賊から・・・」

景麒「知っていたのでしょうか、それが何か」

陽子「・・・・・(涙があふれてきて)すまなかった・・・・」

ふと、蘭玉の言葉を思い出す。

蘭玉「なに言ってるの、すまないことなんてないじゃない、なんでそんなことを言うの」

陽子「・・・ああ・・・そうだ・・・至(イタ)らない王で・・・本当にすまない」

陽子、深々と頭を下げる。

陽子「・・・もう誰も死なせない・・・遠甫(エンホ)・・・桂桂・・・必ず助ける」

拓峰
門が開いて、浅野たちの馬車が駆け込んでいく。

鈴「馬車?こんな時間に」

夕暉「昇鉱(ショウコウ)は日没後でも、いつでも門を開けられるから」

虎嘯「どうぜまたどこかの村で・・・狩りをしてきたのさ」

鈴「・・・また、子供を殺してきたのね・・・」

ED(可能であれば入れます)

第34話終わり・・・