第33話 『風の万里 黎明の空 第十章』


あらすじやキャラクター設定などこちらを参考にしてくださいw →



中島陽子(ナカジマヨウコ)♀:日本からきた慶国の国王。歳は16歳。
大木鈴(オオキスズ)♀:日本からきた海客。歳は16歳。思い込みが激しい。
祥瓊(ショウケイ)♀:芳の国の元皇女。歳は16歳。楽俊にあってから優しいくなる。
景麒(ケイキ)♂:麒麟。慶の国の宰輔。20代半ばの落ち着いた青年。
凱之(ガイシ)♂:30代半ばで人のいいにーちゃん。
桓タイ(カンタイ)♂:30代半ばでメチャメチャつおーいにーちゃん。
沍姆(ゴボ)♀:へそのまがったおばちゃん。

浅野郁也(アサノタクヤ)♂:陽子と一緒に日本から来た高校生。この世界で少し気が狂っている。
夕暉(セッキ)♂:10代後半の少年、頭がメチャメチャ切れる。
虎嘯(コショウ)♂:20代半ばぐらいの、筋肉ムキムキにーちゃん
靖共(セイキョウ)♂:腹黒い男。50代半ばぐらいのおやじ
秋官長(シュウカンチョウ)♀:20代後半のねーちゃん
地官長(チカンチョウ)♂:30代後半の人。悪い風味。
昇鉱(ショウコウ)♂:悪役。30前半ぐらいの男
呀峰(ガホウ)♂:悪役。40代ぐらいの男。
蘭玉(ランギョク)♀:桂桂の姉、中学生ぐらい。
桂桂(ケイケイ)♂:小学校中学年ぐらいの子供
遠甫(エンホ)♂:人の良いおじいさん
玉葉(ギョクヨウ)♀:50代ぐらいの人のいいおばちゃん。王宮で陽子のお世話をする人
班渠(ハンキョ)♂:景麒のペット(?)。狼みたいな獣。声は低い。

注1:陽子の読み方で(ヨウシ)と入っているものは「ヨウシ」。なにも入ってないものは「ヨウコ」と呼んでください。
注2:読めない漢字はみんなに聞いてくださいw
注3:ナレは人数が少ないときは要らないです(緑の文字のところがナレです)
注4:人数メチャメチャ多いです!!なんで被ってくださいww
   被れるのは・・・・男性なら『虎嘯・男・靖共・遠甫・景麒・班渠・兵士・呀峰』と『浅野・地官長・凱之・桓タイ・夕暉』がOKw
             女性なら『女・秋官長・玉葉・桂桂・沍姆』あと『鈴・祥瓊・蘭玉』も被れなくはないですw

陽子役のかたが題名をお読みください(o*。_。)oペコッ

第33話 『風の万里 黎明(レイメイ)の空 第十章』

OP(可能であれば入れます)

陽子N「慶国(ケイコク)・和州(ワシュウ)・止水郷(シスイゴウ)で、鈴は清秀を殺される。
     その犯人が郷長昇鉱(ゴウチョウショウコウ)であり、その上には景王がいると知った鈴は、
     二人に復讐を決意する」

鈴N「楽俊(ラクシュン)によって慶国まで案内された祥瓊(ショウケイ)は、戸籍(コセキ)と土地を与えてくれるという、
   止水郷に向かって旅を続けていたのです」

祥瓊N「陽子は和州で税七割という悪政(アクセイ)が繰り広げられていることを知る。
     そして自分の暮らす北韋(ホクイ)のすぐ東、止水郷には昇鉱(ショウコウ)という悪吏(アクシ)がいることも。
     ・・・このとき私達三人は、慶国和州で運命を共にしようとしていた」

金波宮(キンパキュウ)・雲海上のその威容。冢宰(チョウサイ)の間

靖共「確かに・・・采王(サイオウ)の御璽(ギョジ)に間違いないな、しかし無官の娘だと?」

秋官長「景王への目通りを願っております。采王からの文も」

靖共「才国(サイコク)か、あそこもやはり女王で、立って間がないはず。
    
親しくよしみを通じる義理もないが・・・もしや?」

地官長「いかがなされました?」

靖共「采王は、主上の出奔(シュッポン)をご存じで、わざとそのような使者を・・・」

秋官長「(察して)その文、取り上げてみましょう」

地官長「今のお前は三公(サンコウ)であろう。まだ秋官長(ショウカンチョウ)であった癖が抜けぬのか」

靖共「台輔(タイホ)がおられぬいま、天官(テンカン)を預かるこの靖共が許す・・・」

金波宮・一室

鈴「・・・玉葉(ギョクヨウ)・・・さん?景王は、どんな御方ですか?」

玉葉「そうですね。まだこちらのことが、おわかりにならないことも、
   おありのとうですが・・とてもお優しい御方です、
   髪は美しい深紅で・・・そうそう、お年はあなたとあまりお変わりにないような」

秋官長「秋官長(シュウカンチョウ)大司寇(ダイシコウ)にございます、才国よりはるばるのお越し、
     さぞやお疲れのことと存じます」

鈴「ありがとうございます。あの・・・景王・・は?」

秋官長「それが・・あいにくと主上はただいま遊学中(ユウガクチュウ)にございます」

鈴「遊学?王が?」

秋官長「さようにございます」

鈴「あの、どちらに・・・」

秋官長「・・御使者(ゴシシャ)のことはすぐにお伝えいたします、采王(サイオウ)よりのお文、
     お預かりできましょうか」

鈴「いえ・・・。直接お渡しするよう、仰せつかっておりますので。
  この、献上の品も、改めてお持ちいたします。
  ・・・(出口に向かって歩き出し)失礼いたします」

秋官長「そう急がれずとも」

鈴「あの、あなたは国の偉い方ですね・・・
  (突然振り返り、強い口調で)和州、止水郷(シスイゴウ)で何が行われているか、ご存じですか」

秋官長「和州?(眉をひそめて)止水?」

鈴「・・・・(落胆)景王はいつお戻りになられますか」

秋官長「それはもう間もなく」

玉葉「いえ!(たまらず声を出す)主上は・・・主上はいま・・・」

なにか言いかけた玉葉は秋官長に強い目で制される。

金波宮・門外
暴れる三騅を連れて兵士が現れる

兵士「あれ?この三騅(サンスイ)・・・でよろしいんですよね?」

鈴「ええ・・・あ・・・」

思い出して懐から香毬を取り出し、開いて火をおこす。
そうすると急におとなしくなる三騅

鈴「なかなか馴れてくれなくて」

兵士に不審に思われながらいそいで立ち去る

街道を外れた場所

鈴「王宮に入ることはできた・・・。
  まず昇鉱(ショウコウ)・・・そして取って返して景王を・・清秀・・・じきに仇はとってあげるっ!」

固継・里家・陽子の房室
書類に目を通し印璽を押す陽子。そこに


陽子「桂桂?・・どうした?」

桂桂「あのね、昨日、変な人たちがいた」

陽子「変な?どこに?」

桂桂「里家(リケ)の外。夕方男の人たちが、じっとこっちを見ていた」

陽子「・・・・・・」

蘭玉「桂桂、陽子(ヨウシ)に心配かけないの・・・きっとどこかの難民よw
   (書類が目に入り)ほら向こうに行くわよ」

誰もいなくなると、遠甫の部屋に向かって歩き出す。

陽子「(独り言のように)・・班渠(ハンキョ)・・お前が言っていた連中か」

班渠「はい、昨夜は固継(コケイ)に泊まり、今朝早く拓峰(タクホウ)に去った様子です」

陽子「拓峰から来た男たち・・・もしや浩瀚(コウカン)が・・・私を探して?」

遠甫「陽子、そこで何をしているんだね」

遠甫の書房

遠甫「構わんよ・・・今度はどこだね?」

陽子「和州の、都まで行ってみようかと思います」

遠甫「明郭(メイカク)か。止水といい、和州が気になるようだね」

陽子「(うなずいて)蘭玉が、成人して和州に土地をもらうようになったら困る、
   それなら適当にここの誰かと結婚して瑛州(エイシュウ)にとどまるとまで言っていました。
   そんな、好きでもない結婚をするほど、疎(ウト)まれる和州というものは・・・」

遠甫「(微笑)そういう哀(アワ)れみ方はやめなさい。ここは倭(ワ)ではない。
    なら訊くが、何故婚姻するのだね?」

陽子「それは・・一人では寂しいから」

遠甫「それなら寄り添うだけで、婚姻することはあるまい、
    こちらでは野合(ヤゴウ)というが」

陽子「でも子供が出来たりすれば・・・」

遠甫「こちらでは里祠(リシ)に祈らぬ限り子は生まれぬ。
   ・・・子供がほしければ婚姻する、
   そして子を願う夫婦は同じ里(マチ)におらねばならぬ。
   それで婚姻すればどちらかがどちらかの土地に移ることになる・・・
   これを利用して、苦しい土地から、自分の望む土地に移り
   そこで離婚することは日常行われておる」

陽子「そうか・・・同じ里に移らなければ婚姻したことにはならず、子供も実らない。
   でも、どうしてなんでしょう?」

遠甫「(苦笑)それは里木(リボク)か、天帝(テンテイ)に訊いてみるよりなかろう・・・」

陽子「天が定めたこと・・・そういえば私は・・・王は子を持てないそうですね」

遠甫「王座に就く前に婚姻していれば別だが、王は・・・人ではないからの。
   たとえ望んでも卵果(ランカ)は実らぬ」

陽子「それはいいんです。友達が・・・私の代わりにいっぱい子供を産むと言ってくれました、
   とても嬉しかった・・・でも・・・私は・・なんというか・・・
   天の理(コトワリ)に支配されているのですね・・・それが時折、気になります・・・・」

遠甫「いま、陽子には慶の民という子がおる。・・・どこへなりとも行ってきなされ。
   我が子のことだ、ようく見ておかれるのがよろしかろう」

陽子「・・・はい」

固継の街

蘭玉「じゃ、学校いってきます」

桂桂「(怯えながら)陽子(ヨウシ)、本当にいなくなっちゃうの?」

陽子「うん、三、四日で戻るつもりだ。
   心配しなくても、たぶんあの男たちはもう現れないと思う・・・
   (呟き)目的は・・私だろうからな・・・」

蘭玉「陽子(ヨウシ)!!あの『いい人』によろしくね〜」

拓峰・市街

夕暉「お姉さん!!戻ってきたの?なぜ?」

鈴「なぜって・・・」

夕暉「だってあのまま姿を消してしまったから、もう拓峰には帰らないと・・・
    騎獣(キジュウ)?買ったの?」

鈴「・・・もう馬車で病人を運ぶこともないから」

拓峰・虎嘯の宿

虎嘯「改めて挨拶しておこう、ここの主人で、虎嘯(コショウ)だ。
   実際は夕暉(セッキ)が切り盛りしているがな・・・あんたは?」

鈴「・・・大木、鈴」

虎嘯「変わった名前だな」

鈴「海客(カイキャク)だから」

虎嘯「そりゃ・・難儀(ナンギ)したなぁ」

鈴「(首を振って)故郷を追われたわけでも・・・殺されたわけでもないから」

しばらくすると夕暉が現れ部屋に案内した。

夕暉「お姉さん。この間と同じ部屋でいいかな」

途中台所で鎖見る鈴。

鈴「ええ・・・・くさり?」

拓峰・郷城を巡る内環途
郷城に忍び込むため鈴が夜の郷城の塀を見上げる。覚悟を決めて進もうとしたとき、


鈴「虎嘯・・・あなたたち・・・」

虎嘯「・・・帰ろう」

鈴「・・・ここは昇鉱の役宅でしょ。やっと探り当てたのよ。
  三つもある別宅のうち、今日はここに泊まっているはず。あたしは、昇鉱を!」

虎嘯「(低く、強く)お前さんがうちに泊まっていたことが知れれば、
    オレたちもな、昇鉱に殺される・・・・(元に戻って)まぁ、みすみす殺されやしないがな」

鈴「・・・あたし・・・」

虎嘯「それに、今夜は昇鉱はここにはいない」

鈴「・・・だって!」

虎嘯「急に、発ったんだ。オレたちはいつも見張っている、間違いない」

鈴「・・・え?」

虎嘯の宿

夕暉「お姉さん・・・よかった!」

男「ああ、よかった」

女「無事だったんだね」

男「はやまるんじゃねえぞ」

虎嘯「なあ、昇鉱が憎いかい」

鈴「憎いわ」

虎嘯「あいつだって自分が憎まれていることは知っている、
   護衛は多い、鈴一人でどうにかできる相手じゃない」

鈴「でも!清秀・・・は・・・具合が悪かったのよ・・・殺すこと・・ないじゃない・・・
  堯天(ギョウテン)に、病気を治してもらいに行こうとしていたの・・・
  でも、こんな街になんか来なきゃよかった、
  もっと早くお医者に診せていれば、それで・・・」

夕暉「お姉さんは自分が憎いんだね・・・昇鉱より自分が憎いんだ、
    昇鉱ではなく自分を罰したいんだね」

鈴「そうよ・・・あたしが、清秀を連れてきたばっかりに・・・
  (机を叩く)死にたくないって言ってたわ、あんな強い子が死ぬのは怖いって泣いてた。
  でも死んでしまった。あたしのせい。みんなあたしの。取り返しがつかない。
  清秀は許してくれるわ、そういう子だもの、でもあたしはあたしが許せない!」

夕暉「でも・・・お姉さんがしようとしたことは全然意味がない・・・
    昇鉱と同じ人殺しになるだけだよ」

鈴「じゃあ昇鉱を許しておけって言うの?
  たくさんの人を苦しめて、殺している、そんな奴を」

その場にいる全員が、鈴の台詞を聞いて真剣なまなざしで鈴を見る。

鈴「・・・虎嘯・・あなたたち・・」

虎嘯「(自分の指を見せながら)止水にいるのは奴に怯えた腑抜(フヌ)けばかりじゃない・・・
    昇鉱は必ず倒す、オレたちはその時機を待っている」

虎嘯は懐から鎖をだし、無造作に一つ環をちぎる。

虎嘯「昇鉱を忘れるか、・・・これを受け取れ」

鈴「・・・・」

虎嘯「一度受け取れば抜けることはできない。裏切れば制裁を覚悟してもらう」

鈴「・・・ください、裏切ったりしない、なんでもする・・・」

街道

景麒「あれが、明郭(メイカク)です」

陽子「・・・大きいな」

景麒「元は小さな街でした。しかし明郭は街道の要衝です。
   虚海(キョカイ)に面した港からの荷物、北から来る小麦や毛織物、
   すべてが一度は明郭を通ることになります・・・
   その荷と旅人に、州侯(シュウコウ)呀峰(ガホウ)は税をかけています、荷の護衛をする、と。
   実際街道には追いはぎが出るそうです」

陽子「その追いはぎ、呀峰の仕業かな」

景麒「まさか・・・」

陽子「知っているか、お前の直轄地である北韋でも税は三割だそうだ」

驚く景麒

明郭内・呀峰の別宅

昇鉱「これを渡しおく」

無造作に旌券を浅野に投げる。

昇鉱「私の裏書きがある、和州の中でならどこの街でも咎(トガ)め立てされることはあるまい。
   まぁ言葉が通じぬのだから滅多に使わぬだろうが」

浅野「へえ・・・」

呀峰の部屋

呀峰「(少し落ち着かない風に)台輔(タイホ)が北韋(ホクイ)に、か?
   北韋は台輔の直轄地、決して不思議ではないが」

昇鉱「しかし台輔は、主上がおられるという、雁国(エンコク)に向かわれたと・・・・
   『あちら』は申されているのでしょう」

呀峰「噂は本当かもしれぬ」

昇鉱「主上が・・・雁国ではなく・・・浩瀚(コウカン)の残党から逃げ回っておられるという?」

呀峰「うむ、しかし台輔がお訪ねになったのは里家(リケ)だと?
   主上が里家にお住まいになるなど、考えられぬこと」

昇鉱「この者を・・・そこに遣(ツカ)わしてみてはいかがでございましょう」

浅野「(驚いて)・・・オレ・・・?」

昇鉱「その里家に、台輔や、畏(オソ)れ多くも主上に繋がりのある者がおるならば・・・、
   主上にこのアサノのことが伝わりましょう」

呀峰「うむ」

浅野「さっきから何話してる・・・んですか?景王って人は王宮にいるんじゃないの?」

呀峰「主上は・・・・お命を狙われておいでになる」

浅野「優香(ユカ)が・・・?なんで・・・?」

呀峰「悲しいことだ、主上はその弑逆者(シイギャクシャ)から逃れるために、
   市井の中に身をやつしておられる」

昇鉱「和州侯は主上を、陰ながらお守りしようと考えておられるのだ。
   あるいは護り強固なるこの和州城にお迎えしてもよい」

呀峰「弑逆者、浩瀚よりも先にお見つけせねばならない・・・できるか?」

浅野「・・つまり・・優香は王様なんかにされたあげく・・・殺されようとしているのか・・・
   この間違った世界の、間違ったルールのために・・・。
   オレが、救い出してやらなきゃ・・・ははは、こんなとこ・・・とっとと逃げ出す(低く笑う)

昇鉱「承知のようですな・・・では、里家にあたり情報を・・・」

呀峰「・・・主上を、必ず」

昇鉱「・・は・・・」

そこに女性があらわれる。


女「州侯さま・・・」

呀峰「おお、刻限か。(昇鉱を見て)お前たちも、見ていくがよい・・・今日は多いぞ」

和州・明郭・街中
複雑に入り組んだ路地を歩く祥瓊

祥瓊「また行きどまり・・・どうなっているの、この街は」

凱之「お姉さん、道に迷ったのかい」

祥瓊「あなたこの街の人?」

凱之「まあな」

祥瓊「ここは本当に明郭なの?州都で、堯天に次ぐ栄えた街だと言われている」

凱之「・・・ああ・・・なにしろ元は旅人宿しかなかった街が、少しずつ広がっていったんでね、
   そのたびに壁を築き、元の壁を壊しもしない。
   使う者の便など考えず、ただ税金がとれる店が増えればいいから・・・
   道だっていいかげんなんだ・・・これが明郭なのさ」

祥瓊「呆れた・・・」

凱之「宿ならそこかしこにあるから」

凱之が指した方角にある大通りを大人数の人が暗い顔で歩いていた。

祥瓊「あれは・・なに?」

凱之「やめたほうがいい」

祥瓊「・・・・?」

祥瓊は凱之の制止を振り切り、そちらに向かう。

凱之「・・・いやなものを見る羽目に、なるんだがなあ」

明郭・広場
広場の中心に囚人が磔にされている。その近くに呀峰・昇鉱・浅野もいる。


祥瓊「・・・磔(ハリツケ)・・・?いまじゃどこの国でもやってないって」

凱之「和州にはあるんだ」

呀峰「明郭の隔壁は、妖魔や盗賊から旅人と市民を守る大切なもの・・・
   その夫役(ブヤク)は、明郭に暮らす者の義務である。
   隔壁整備の夫役を怠る者は、明郭の住む者たちを危険にさらしたに等しい・・・
   これは市民の裁きである」

呀峰の言葉が終わるとともに、罪人の掌(テノヒラ)に釘が打ちつけられていく。
その光景をみて、祥瓊は足元に転がっている石を拾う。

祥瓊の記憶

沍姆「あたしの息子は・・刑場に引き立てられるこんな小さい子を憐れんで、
   役人に石を投げた・・・捕まって・・・その子と並んで殺された・・・」

明郭・広場
無意識に拾った石を投げる祥瓊。一人の兵士にあたり、あたりは静寂に満ちた。

兵士「誰だ!」

呀峰「いま石を投げた者・・・を・・引きずり出せ」

そのとき班渠が現れる。

兵士「妖魔だ!!」

女「妖魔が現れたわ!!」

兵士「逃げろ!!」

班渠は磔にされた男をくわえ飛び去る。混乱の渦の中祥瓊に近づく陽子。

陽子「こっちだ、急げ」

祥瓊「・・・・」

浅野「(班渠を見て)化け物・・・あいつ・・・見たことある・・・あいつ・・」

呀峰「早く石を投げた者を見つけ出せ!死刑囚はどこへやった」

昇鉱「(呀峰を無視して)さっきの・・・石を投げた女・・・捕まえてみろ」

浅野「・・・・・」

昇鉱「例の武器を・・・使ってな」

浅野「・・・・・・」

明郭・街中
逃げる陽子と祥瓊。わき道にそれて一旦止まる。


陽子「無茶をする」

祥瓊「(息切れ)あ・・・・りがとう・・・」

陽子「・・・・気持ちはわかる」

祥瓊「あの・・磔にされたいた人たちは・・・」

陽子「大丈夫だ」

その時兵士がわき道に入ってくる。

兵士「いたぞ、あの娘だ!」

兵士の立ちふさがるように陽子が剣を抜く。

陽子「・・・行け、逃げろ」

祥瓊「・・・でも」

陽子「私のことは・・・心配しなくていい」

祥瓊「・・・・」

なにかを決心したように走り出す。しばらくして一度振り返る。

祥瓊「(かすれて)・・・ありがとう・・・」

明郭・隔壁の外
走る祥瓊の目の前にいきなり手が出た。

祥瓊「!?」

桓タイ「手を貸せ」

浅野「待て!」

桓タイ「・・なんだお前か」

浅野「なんだ・・・初対面だろ・・・それに言葉が・・・」

桓タイ「こんなところで何をしている・・・」

浅野「オレは・・・景王を開放する」

桓タイ「なに?」

浅野「こんな世界・・・否定する」

桓タイ「それでどうしてこの娘を追いかける」

浅野「・・・それは・・・くっ・・・オレ・・・何やってんだ?」

混乱した浅野の横から槍を持った兵士が三人、桓タイに突っ込んでくる。

桓タイ「(祥瓊に)飛び降りろ」

祥瓊「はい!・・(飛び降りるが足を挫く)いたっ・・・」

桓タイ「む!!(兵士を蹴散らして自分も飛び降りる)・・・もう一人の娘はうまく逃げたかな」

祥瓊「・・・くっ(足の痛みをこらえる)

桓タイ「おぶされ・・・」

祥瓊「(おぶさって)さっきの男・・・何を話していたの?」

桓タイ「ああ、あいつは・・・海客だ」

祥瓊「海客?」

桓タイ「景王を助けたいとかなんとか・・・わからんな」

ED(可能であれば入れます)

第33話終わり・・・